静かな検査環境
MRIでは画像を得るための磁場の変化によって大きな音が発生し、高性能な装置ほど音が大きくなる傾向があります。当院のMRI装置は、静音化技術 Pianissimo により、耳障りな音の伝わりをカットし、患者さんがリラックスできる静かな検査環境を実現しました。
MRIにおける画像診断の質の向上と検査時間の短縮を実現させるため、数々の高速撮像法が開発され製品化されてきました。しかし、撮像が高速になればなるほど、撮像中に発生する騒音は大きく耳障りなものとなり、 患者に与える負担が無視できないレベルになっています。他院では耳栓を使ったり工夫をしているようですが、それでも患者さんにとっては、耐えられない苦痛により検査が出来ないことがあるようです。当院の静音MRIでは、ほとんどの患者さんが耳栓なしでも苦痛を訴えることもなく検査を受けています。
大きな騒音を発するMRIの音の発生メカニズムは、一般のスピーカーと同じ原理です。スピーカーは、磁石の中に置かれたコイルに交流電流を流すことで、フレミングの左手の法則に従いローレンツ力が発生し、コイルが振動することで音が発生します。
超電導MRIシステムの架台は外側に静磁場磁石があり、その内部に筒状の傾斜磁場コイルが配置されています。傾斜磁場コイルに傾斜磁場電源から電流が流れると、スピーカーと同様に傾斜磁場コイル全体が振動し、大きな音を出すことになります。そのため、加えられた電流が急激なほど大きな音を発生し、切り替え速度が速いほど高い音になります。
MRIの騒音に対するソフトウエアでの取り組みとしては、傾斜磁場の立ち上がりなどを最適化させるサイレントシーケンス技術があります。上述したように、傾斜磁場コイルへの急激な電流が加えられることが音の大きさに関連します。そこで、傾斜磁場の立ち上がりを緩やかにすることにより、傾斜磁場コイルの振動を低減、騒音の低下を実現しています。しかし、この技術は、傾斜磁場印加時間の延長にもつながり、急激な傾斜磁場の切り替えを必要とするsingle shot EPI法などでは画像劣化を起こすため、適用することができません。パルスシーケンスでの適用は、このように撮像種に依存するため、すべての撮像を静音化することは困難でです。
当院のMRIは、すべての撮像を静音化する、ハードウエアでの取り組みを行っています。Pianissimo構造では騒音の発生源である傾斜磁場を真空密封し、音の伝達をシャットアウトすることで、撮像法や条件を妥協することなく、騒音を抑制しています。