脳腫瘍による頭痛の特徴
脳腫瘍で大事なことは、脳圧(頭蓋骨の中の圧力)が亢進していることがあるということです。
脳腫瘍が発生し大きくなりましても、人間の脳は頭蓋骨に囲まれてますので、外から見ても腫れてきているとか、変形しているなどの外見に変化を見いだすことは殆どありません。しかし、頭蓋骨の中の空間に存在する脳を徐々に圧迫してくるため脳圧が上昇し始めます。脳圧亢進症状を呈した場合の臨床症状としては、頭痛・嘔吐・うっ血乳頭が3兆候といわれています。
人間というのは眠ると脳圧が高くなり、目が覚めると下がるというリズムがあります。普通の人は寝て脳圧が上がっても、頭痛を感ずるレベルには達しないので頭は痛くありません。ところが、脳圧全体が上がってきますと、痛みを感じるレベルに入ってきます。そうすると眠っている時、どんどん脳圧が高くなり頭が痛くなります。目が覚めてしばらくすると楽になります。これを「目覚め型の頭痛」といい脳腫瘍に特徴的な頭痛です。
脳腫瘍の症状
脳腫瘍により、徐々に脳圧が亢進していると、1か月くらいのうちに頭痛の症状がどんどんひどくなってくる、一旦嘔吐するとしばらくは楽になるなどの症状が出てくることがあります。
発生する脳腫瘍の部位により、いろいろな症状が出ますが、痙攣発作、手足の麻痺、手足の感覚異常、聴力障害、めまい、視野障害、記憶力や判断力の障害などが主な症状です。
脳腫瘍では、人格・性格の変化や判断力の低下などが初期症状のこともあります。最近話の内容の辻褄が合わないとか、いらいらして怒りっぽくなったとか、先程話した内容をすぐに忘れてしまうなどの、あたかも痴呆症の症状のような変化が脳腫瘍の症状としてみられることもあります。
下垂体腺腫
下垂体腺腫という脳腫瘍がありますが、下垂体はホルモンを分泌しているところですので、この場合には全身に変化が現れます。生理がとまる、男性なのに女性のような乳房になる、乳汁がでる、インポテンツになる、顔つきが長くなり唇が肉厚になったり、まんまるな顔になったり、僅かな間に顔つきや体つきが変わったりします。
下垂体腺腫で、特に多いのがプロラクチンというホルモンを多量に分泌する腫瘍です。下垂体腺腫の場合、最初に頭痛はおこらず、生理が止まり、70%に乳汁分泌が起きます。婦人科に行くと、ホルモンを注射したり飲んだりして生理がもどります。2~3年、経過してから、脳ドックなどでMRIの検査をしますと、下垂体が入っているトルコ鞍と呼ばれる場所が腫瘍で満杯になり、大脳と下垂体の間にある鞍隔膜という膜が押し上げられているのがみえます。鞍隔膜というのは脳を覆っている硬膜という膜の延長ですので痛みを感じる部分です。
したがって、頭痛がおきてきますが、一般の内科では「かぜ」とか「片頭痛」とか診断されます。しばらく経つと、鞍隔膜が破れますので、頭痛は止まります。しかし、鞍隔膜が破裂すると、腫瘍が大きくなってきて、視神経を圧迫してきます。そうすると、眼がかすんだり、視野が欠けたりしてきます。